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 f:id:Shimabanana:20160613092650j:plain:right:w300日曜日の午前、休日出勤で家人がいないソファを独り占めして、録画しておいてくれたDVDを観るのはなんともいえずいいもんだ。「トットてれび渥美清の巻に涙し、「SONGS 小泉今日子」でキョンキョンラブだけれど、歌よりも演技やエッセイが断然いいと確信。
 午後からは私も仕事。所要で総武線の端っこまで行った往復も車中で仕事。初めて食べた睡蓮菜の美しく、おいしいこと。台湾の野菜で、豆苗をもっとしっかりさせたような味、シャッキシャッキ。

 ユミちゃんを誘ってアッコちゃんの転院先にお見舞いに行く。意外にも落ち着いている様子で眠っている。看護スタッフが大事にしてくれているのが伝わってくる。看護師さんが口腔ケアをしながら、口腔ケアが感染症を防ぐのにいかに大事か説明してくれた。お見舞いに行った私たちにとっても、今までの病院よりも居心地いい。窓が大きくて明るいからかな、そう思ってレースのカーテンの隙間から外をみると、江ノ島灯台と水平線が見渡せた。
 「電話貸してくれますか」東北訛りの声がして、入り口を見ると七十代とおぼしき女性が入ってきた。駅前の叔母の店でお茶を飲んでいたときのことだ。「青森から来たの?」──青森って特定する叔母も思い込みが激しい。「ううん、山形。娘んとこにサクランボもってきたんだけれど、迎えの車が来ないの」──店の外に大きな荷物を抱えたダンナさんらしい人が立っている。駅前のお店はいろんな人がひょっこり入ってきて飽きない。叔母とゆっくり話をするつもりだったのに、ひっきりなしに来客があるので諦めて電車に乗った。話をする時間がなくて逆に良かったのかも。
 f:id:Shimabanana:20160612135752j:plain:right:w350茅ヶ崎から白楽へ。電車の中から改札に立っているおケイねーねが見える。散歩堂さんがゲストとして出演するトークショー「ひと月十冊」を聴きにツイードブックスへ向かった。店名からしてファッション系にも強く、以前、友人経由で1970年発行の「装苑」を探していただいたことがある。店主さんもお店もくつろいだオシャレ感がある。ドジブックスさん、ドーナツブックスさん、散歩堂さん、ツイードブックスさんが順番に、このひと月で読んだ本の中からおすすめの十冊を取り上げて説明する。もう18回も続いているのだそう。しかも毎回、南陀楼さんからも「ひと月十冊」が解説付きでメールで届けられるという。散歩堂さんは同世代だけれど、それ以外の方々は「寺内貫太郎一家」をライブでは見ていないという、ずいぶん年下の方たち。でも向田邦子も昭和の芸能についてもしっかり読み込まれている。散歩堂さんは初回とは思えない落ち着きぶりで、笑いを取ることも忘れない。さすが古本芸人! 面白い企画だった。唯一困るのは、「そうそう!」「それはね〜」と口を挟みたくなる衝動を抑えること。だってこの前、一之輔師匠が客席から口を挟むおばさんに「そこそこ、私語厳禁ですからね」と笑いながら注意をしていたんだもん。 
 ツイードブックスさんで「ステーキの焼き加減」(古波蔵保好)ほか3冊購入。与那原恵さんの『わたぶんぶん─わたしの「料理沖縄物語』は、大叔父である古波蔵さんの『料理沖縄物語』への〝かえし歌〟のように感じてしかたない。どちらも大好きな本。

森繁久彌との対談で、向田邦子さんが「飛行機に乗る時にはこの人と一緒に乗りたい、この人と一緒なら絶対に落ちないと思う人が何人かいて、その一人が森繁さん」と言っている。事故の8ヶ月前の対談だけにギョッとする。

昨夜は一之輔師匠とこはるさんの欧州遠征壮行落語会@坐高円寺2。一之輔師の「千早振る」はぶっ飛んでいた。disrupt(ツタガワ社長におそわった注目マーケティング用語、破壊させる)ですな、師匠!  こはるさんは「馬のす」、一之輔師匠のニ席目は「宿屋の仇討」。
 はねて洋子さんたちと「ちんとんしゃん」。街の喧騒がウソみたい。江戸情緒のある貴重な一軒。
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家にこもって収録許可申請の仕事。文芸年鑑に遺族の連絡先が載っていない場合の問合せ先を探すのが一苦労。許可取りが期日中に終わるかはらはら思案中、携帯に着信が入る。「山田太一です」の声。今しがた某所に収録願いを送ったところ、すぐにお返事、それもご本尊から! こんな狭っ苦しい部屋に先生の声が響き、あわあわするしかない。明朗ですこぶる丁寧。一期一会の宝物。
f:id:Shimabanana:20160610091550:plain:right:w350図書館に行く途中、近所の公園の大木に美しい苔がむしているのに気づく。すばらしい緑。
夜、チャンネルNECOでドキュメンタリー映画「約束 名張毒ぶどうしゅ事件」。元旦の朝、老母役の樹木希林が網の上でコロコロ焼いた餅を1人で淋しいと言いながら食べ、主人公役の仲代達矢が独房で出される年に1度だけのお節弁当の中にある体長15センチの鯛の尾頭付きに歓喜する。このシーンは記憶に留めたい。

〝橋田〟文化財団へFAXをおくったあと、某酒蔵に画像拝借の電話をかけたら担当者の名前が〝橋田〟さんだった。
低気圧の影響で頭が重く、起きてはいても眠っているような1日。夜もぼんやりテレビをつけたら映画「白河夜船」が始まるところ。主人公は眠ってばかりいる……。いちにち阿佐ヶ谷から出なかったので、こんな偶然しか面白がることがない。

f:id:Shimabanana:20160609084933j:plain:right:w300 よしもとばななの原作を映画化した「白河夜船」。若木信吾監督がライカMと35ミリレンズ1本だけで撮ったという映像と主人公を演じる安藤サクラの表情はたしかに見ものではあるけれど、感覚的な世界観だけに、自分にはあまりフィットしなかった。

安藤サクラ井浦新のキャスティングなら、在日コリアン二世のヤン・ヨンヒ監督による「かぞくのくに」のほうが断然いい。北朝鮮と日本にそれぞれ生きる家族が、連絡をとりたくてもとれない、本当のことを話せない、どうしようもない辛さと憤り。今の時代にこんなことがあっていいのかと、この映画をとおして知ることができた。これは多くの人が観るべき映画。
「かぞくのくに」に役者として出ていたヤン・イクチョンが監督をした映画「息もできない」の衝撃も忘れられない。これはもう一度きちんと見直そう。

夜は「キリンビール一番搾り 東京づくり」を飲みながら、近所のJAで買った杉並産枝豆、五町田酒造の味噌をディップにもろきゅう。
横浜づくりに比べて東京づくりは軽やか……そう思って表示をみるとアルコールが5度。横浜づくりはたしか6度だった。1度の違いがわかっただけで、鼻高々。

とんがらし

f:id:Shimabanana:20160607093503j:plain:right:w250いつもの帰り道の草むらが、こつぜんと消えて駐車場になっていた。もうすぐ半夏生がみられる頃と楽しみにしていたのに。駅から近い便利な場所で数年のあいだ草むらだったことが奇跡なのだけれど、親友がいなくなったみたいだ。

水道橋にあるグローバル企業で人事の採用担当への取材。ダイバーシティが企業のお題目としてではなく、浸透していることがわかる内容でいい気分。

帰りに遅いお昼をと、グーグルマップで蕎麦屋を検索して、すぐ近くにある「とんがらし」に入ってみた。簡易椅子が7つある簡素な店は立ち食いの部類に入るのだろうか。立ち食いにしてはのんびりした流れ。ダントツ人気の「ミニ天丼」を注文する。自分の番になって驚いたのは、大将が注文ごとに天婦羅を揚げていること。その間に女将さんが天丼の器を湯煎してあっためてからご飯をよそり、「いいよ〜」という大将の言葉で近づいて天婦羅を盛りつける。小エビ5本、ナス3枚、シメジ2塊、大葉1枚がのっかって「ミニ天丼」430円。しかも若布の味噌汁付き。とてもミニじゃないです……。
あとから検索してみると、ミニ天丼は手間がかかるので14時半から15時45分の間だけ注文を受けるそう。ナス天をイカ天に変えることもできるみたい。だから注文の時「ナスでいい?」と聞かれたのだ。次の機会があれば、ひもかわうどんにも挑戦したい。
冗談好きの大将みたいで、厨房でのささやかに響く大将と女将さんのあったかなやりとりがを耳に届く。食べ終わったお客さんは、食器を種類ごとにきちんと仕訳して、ゴミもきちんと処分して、必ず、「ごちそうさま、おいしかった」と声をかけて店を出て行く。この店が存続していることにみんな感謝しているのだ。水道橋の文化遺産に勝手に認定。
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ヴィヴィアン・マイヤー

阿佐ヶ谷散歩から戻り、見逃してしまったドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』をDVDで観る。ヴィヴィアンが1950年から90年にかけてニューヨークやシカゴ、フランスで撮影した膨大な写真は、一気にその時代のその場所に引き戻す力があり、繰り返し見たくなる。ロバート・フランクダイアン・アーバスを思い出す写真もあるけれど、ものすごい才能。切り取った人物の人生まで写しとっているし、悲哀、闇、ユーモアだってある。シカゴの青年歴史家ジョン・マーロフが老女の遺品を数百ドルで買わなければネガもゴミとして捨てられ、世に出ることもなかったと思うとぞっとする。ヴィヴィアンの写真を知っただけで喜ばしいが、マーロフは彼女のルーツや素顔を追い求める。それはヘンリー・ダーガーの生涯を思い出させて切なくなる。ヴィヴィアンは乳母としてさまざまな家族と接してはいるけれど、変人で想像を絶する孤独に生きたということで二人は近い。孤独があれだけの創造を生んだという、孤独の力を思い知らされはするけれど、やりきれなくて、冷え冷えしてくる。
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録画してあった「トットてれび」も観る。今回はトットちゃんと向田邦子が一緒に過ごした時がどれだけ心地のいい、大事ななものだったのか。そのことが伝わってきた。でも35年前の夏の事故をふりかえるのはやっぱり辛すぎる。短い放送時間の中で向田さんにまつわるいろいろなことを匂わせて、脚本もさすが。

姉の愛犬が脊髄梗塞で歩けなくなったという。犬は時々、ソファや階段の影で泣いているという。姉や姪をなぐさめてくれるいい子なのに。どうしてこうなるんだろう。現実を受け入れるのはたいへん。詰まった血管とは違う血管が育つことがあるというお医者さまの言葉に望みをかける。